新年早々から犬ぞり三昧の日々が続き、
今日もトナシベツの森は、犬ぞり使いのコマンドが響いている。
毎年訪れてくれるゲストも、
初めて訪れるゲストも、
橇犬との時間を過ごすのが、なにより一番の目的なのが、本当にうれしい。
松原が育てる橇犬は、アラスカンハスキーとよばれる
橇を引くためにより良い犬をと、交配を重ねた犬だ。
純血種と呼ばれる犬に分類されないMIX、日本で言う雑種である。
ペットとして飼育される愛玩犬と違い、
彼らは、働く犬、使役犬と呼ばれる。
盲導犬や警察犬、牧羊犬や、最近では災害救助犬や介護犬など
彼ら自体が脚光を浴びることはあまりないのが実情の犬達である。
そんな使役犬である橇犬に脚光を当てるのも、松原の役目だ。
勿論、ツアーでは、橇犬との接し方などもプログラムしてあり、
普段使役犬と接する機会がない人にとって、
個性豊かな彼らから学ぶことは本当に多い。
橇犬には、コマンドと呼ばれる指示を与える。
その指示で人間との共同作業が行われる訳だ。
「 進め!行け!」 = 「 ハイク ・ Hike !」
「 止まれ!」 = 「 ウォー ・ Whoa !」
「 待て! 」 = 「 ステイ ・ Stay !」
ピクニックツアーで使うコマンドは、この3つが基本である。
橇犬達は、指示・指令を出され、それに応える。
気が遠くなる反復練習によって、要求に応えられるような橇犬となってゆく。
何故、人間の指示・指令に従うのか?
松原はこう感じている。
犬と人は、対等の関係で、共に生きている。
それぞれが依存して無いものを補い合う。
人間にとって、犬は無くてはならない存在とは言い過ぎかもしれない。
しかし、今の松原には、橇犬との関係は共に生きる「友」そのものである。
使役犬は、人が指示を出し犬がそれに答えることで事が進む。
松原の橇犬は、荷橇を運び、褒められる。
松原は、「褒める」という行為を何より大事にしている。
今シーズンも、こんな素敵な出逢いがあった…。
………、
小学生のY くんは、とても元気にコマンドを出して、
自分も橇犬の仲間になって快調に進んだ。
そして、快調過ぎて少し我を忘れる。
下り坂をノーブレーキで駆け下り、カーブで橇が暴走し、
反動で橇のステップを踏み外し、ハンドルから手を離してしまう。
当然彼は置いてけぼりになり、無人の橇を追いかけることになる。
「 Whoa ! Whoa ! Whoa ! 」 と、空しく彼のコマンドが木霊する。
そして、なんとリーダー犬 ・ アークは、
Y くんのコマンドに反応し、50m程で走るのを止めるのである。
必死の形相で橇に追いついたY くんは、すかさず橇に飛び乗る。
橇に飛び乗ったY くんをアークは少し振り返り確認する。
Y くんは橇に乗ったまま、肩で息をしている。橇は止まったままだった。
一部始終を見ていた松原は、Y くんにこう伝えた。
「 Y くん 、君のコマンドに、アークは、応えてくれる。
それはとても素晴らしいことだ。どうだ、ウレシイかい?」
「うん!」
「 君のコマンドに犬は反応し橇は止まった。
そして、君は橇に追いついて、先ずしなければならない事があるんだ。」
「なんだか分かるかい?」
「………。」
「勿論、また橇が走り去らないように、アンカーを打つ。
そして、君は何より先に、リーダーのところに駆け寄り、置き去りにせず
止まってくれた感謝の気持ちを伝えなければならないんだよ。」
「………。」
「リーダーに感謝の気持ちを伝える。そして、そんなリーダーたちを褒めよう。」
「はい、ありがとうって、すごいねって、いいます………。」
………、
犬達に人と一緒にいることが、とても居心地がいいと感じさせるのに、
褒めるという行為は欠かせないと思っている。
アウトライダーの橇犬達は褒められて育った。
ツアー中、犬達を褒めるチャンスに恵まれるように、いつも祈っている。
褒められる犬と褒める人間。
それは人と犬のイイ関係である。
最近のコメント