トナシベツで橇犬として生まれて。
仔犬たちが世に現れて、漸く1ヶ月が経った。
それは、日々成長する天使たちの変化に
驚き感動する、あっという間の30日だった。
そして…、
吠える!…
噛みつく!…
うなり、歯を剥く!…
シッポを振って、追いかけっこ!
犬の場合、そんな日々が…わずか1ヶ月で始まる。
勿論、ティガは母として狼狽えない。そして堂々としている。
生まれ落ちた仔犬達をそれは大事に大事に扱っていたティガ。
そんなティガが、あま噛みをして躾をする姿は、親としての貫禄を感じさせる。
誰に教わることもなく、子育てという難儀を行う犬という生きもの。
ティガの子育てを眺めながら、そして、人という生物を思う。
…………、
人の特徴として、「見様見真似…」がある。
手本があると、同じに真似る能力。
太古の時代から、「学習」は人が生き残るための術だった。
ティガの仔育てから、
新米ママでさえ、見真似ることは数知れない筈だ。
松原も、これまで母犬からいろいろ学ばせてもらってきた。
しかし、そんな母犬から仔犬を取り上げなければならない。
アウトライダーでは、母犬は僅か1ヶ月で、
母としての任を終えさせてしまう。
人との関係を密にするために、
完全に母としての「犬」の存在を消してしまうのである。
生後半年の間に、自分を生かし守ってくれる、
そして大事な手本として、「人」の存在を刷りこんでゆく。
橇犬の場合、犬ぞり使いが親犬の役を担わねばならない。
立派な橇犬になるための、
何より一番大事なのが幼少期であり、
そこに人が深く深く関わる。
これまでの橇犬達と同様、これからの日々が松原の腕の見せ所、
そして一番有意義な大事な時間である。
離乳食が始まり、オシッコ、ウンチの始末もすべて人の手が必要となる。
人が母犬の温もりを感じさせ、そして父犬の厳しさを、
そして生きる上での楽しさを教える。
「犬的に、人って見掛けがヘンテコリンだけど、
でも、なんか 人といると、安心…するなぁ。」
……そう、思ってもらえるように。
犬と暮らすことで得られる諸々、
それには、責任と義務がついてまわる。
犬ぞり使いには、その心づもり・覚悟が欠かせない。
ティガから大事な仔犬を預かった松原には、
彼らの橇犬としての「未来」が託されている。
犬もちゃんと、人の手本となることに気付く日々。
トナシベツで橇犬と人は共に学び育つのである。
















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